一九九〇年代に入って自治体の各種計画や提言などで、新しい、そして最もポピュラーな用語となったのが、「市民、企業、および行政の協力」であろう。もっとも、従前から公私の役割とか官民協力という表現は広く使われてきたが、最近になってこの民が二つの「民」、すなわち市民と民間の企業とに分化することになった。これにはそれなりの理由がある。かつて公害をはじめ、企業の利潤本位の活動や高度成長の矛盾が吹き出ていた頃、多くの住民運動や消費者運動にとって企業というのは運動の対象であり、闘いの相手、ひいては敵ではあっても、決して協力しあうような仲間でもパートナーでもなかった。一方、自治体、なかでも革新自治体は、反資本的な立場をとりながら、“住民本位”の行政、産業基盤の整備よりも公害防止と福祉を重視する政策をスローガンにしていただけに、企業をして行政の協力者として強調することなど、考えられない立場にあった。保守系の自治体にしても、企業との協力をあえて前面に出すような姿勢は慎んでいた。要するに、企業と社会は対立していたのである。